アフターコロナを考える

世界中で新型コロナウイルスが猛威を奮っています。日本はまだまだ上昇曲線を描いていますが、ピークを過ぎようとしている国も出てきました。その中でアフターコロナの世界の議論もされるようになりました。

新型コロナウイルスが一段落したあと、日本はどう変わっているのでしょうか。結論をいうと、「ほとんど変わらない」です。

安倍総理は、緊急事態宣言の中で「戦後最大」という言葉を使いました。2020年4月半ば現在で、国内の死者は、200人弱と3桁前半です。対して、東日本大震災の死者は20,000人弱でした。原発事故も起き、サプライチェーンも寸断され、かつて経験したことのない事態でしたが、それ以上になると予想しているわけです。

東日本大震災の復興はいまだ終わったとは言えません。高台に移転した方、職を失って地元を離れた方も大勢おられます。一方で地元に残って頑張っておられる方も多くおられます。あの大災害で日本全体の社会構造まで変わったでしょうか。

毎日、感染者数は増えています。今のところ、数字上、諸外国に比べて封じ込めは成功していると言えるでしょう。国民の多くは、総理が言うような東日本大震災以上の死者が出るほどの厄害になるとは考えていないでしょう。

新型コロナが去った後、あるいは、潜在化してインフルエンザと同じような付き合いができるようになった後は、コロナの前と後では社会構造まで劇的に変わることはないでしょう。しかし、アフターコロナでは確実に私達を取り巻く環境は変化してきます。これから示すのは、被害が戦後最大まで行かなくても社会に与える変化を考えています。

◇ ◇  目 次  ◇ ◇

  • 土地の値段は、都会は下がり、地方は上がる
  • 第N次産業革命
  • 国内生産業の復活
  • サービス単価が上がっていく
  • ライブハウスなどはどうなる
  • 公共事業はどうなる
  • まとめ

■ 土地の値段は、都会は下がり、地方は上がる

テレワークに各会社、対応していきます。働き方改革でテレワーク推進は言われていましたが、新型コロナウイルスという黒船で一気に進むでしょう。サービス産業においては、完全テレワークに対応しているか、いないかが会社が労働者から選ばれる大きなファクターになるでしょう。

テレワーク前提の働き方だと、土地の高い都会に住む必要はないわけです。


リアルが伴う仕事、モノを作る仕事、モノを売る仕事などは完全テレワークはできませんが、三密を避ける必要は出てくるでしょう。その結果、これらの「現場」は土地代の安い地方に移っていきます。それでも、都会に住む人は多いでしょうから、「現場」と「人」をつなぐ物流はこれまで以上に重要視されるでしょうね。

地方でもある程度、生活に便利な土地の値段は上がりますが、不便なところは下がるなど、地方でも土地価格の格差が広がることが予想できます。

■ 第N次産業革命

第3次産業革命までは、説明できますが、第4次は何になるか議論が分かれているところです。
新型コロナウイルスがあたえる影響は、これまで考えられてきた「産業革命」とは違った道筋で一気に進むかもしれません。


これまでの産業革命は、人口の集積、資本の集積、知恵の集積をベースに進められてきました。満員電車、社員密度の多いオフィス、コンサート会場、テーマパーク・・・これをどう変えて行きますか?

今のところは、この構造を保ったまま軟着陸を目指しています成功すれば、社会構造は変わらないで、よかったよかった、になりますが、次に来るであろう、より悪いパンデミックには耐えられません。失敗すれば、多くの犠牲の上に産業構造が変わっていくでしょう。


人口と資本と知恵の分散。それによる発展。今まで経験したことのない手法。これができれば、第N次産業革命になります。それを支える一つが、ICTであることは確かですが、それを成功させるにはまた、2つ、3つ何かが足りない気がします。その一つは「心」だと思います。心を育てる教育だと思います。

教育によってもたらされる効果は、各国異なって、今回の新型コロナウイルス拡大の国による差はこれが大きいと考えられます。


でも、分からない。五千万人から1億人が死亡したと言われるスペイン風邪を経験しても、人間や資本の集積は止まりませんでした。パンデミックは10年に一度起きるとも言われてもいます。新型コロナウイルスは、3ヶ月で世界中に広がりました。今までの社会構造を進めていくと、これからはもっと早く伝搬するでしょう。


今回の緊急事態宣言が出される時、政治を支える団体の影響力が透けて見えて嫌だったですね。官僚の縦割りの弊害でスピード感も落ちたような気がしましたね。経済は大事ですけどね。

■ 国内生産業の復活

マスクがない!なぜ?中国で生産しているからです。国内の自動車生産工場を始め、多くの工場生産が止まりました。なぜ?部品の一部を中国で生産しているためサプライチェーンが寸断されたためです。その結果、マスクをしていない日本人が街や職場に大勢います。工場がとまったため派遣切りや雇い止めが出て、雇用が不安定になっています。


対する中国は、マスクや医薬品を特定の国に配布するなど、新たな一帯一路を展開しています。アメリカやブラジルが怒るのも理解できます。


今回の新型コロナウイルスで反省すべきは、いざというときに日本の生産の場がすぐにはストップしないように準備すること。いざというときに必要となる物資を流通できること。そのような産業構造を構築することが必要になります。

そうしないと、いざというときに他の国に自分の国の生命線を握られることになります。
日本は内需大国といわれます。輸入に頼っています。見直すべきでしょう。AIの活用で解決策も探れるはず。

■ サービス単価が上がっていく

テレワークやテレビ会議、チャットなどで人と直接、会わなくても仕事ができる環境が整っていくでしょうが、リアルで会わないといけない場面もあります。


これまでは、会議では狭い会議室に肩が触れ合うくらい人間を詰め込んでの集まりも可能でした。オフィスでもイスを動かせば、同じ画面を見て情報を共有できる位、隣の人との距離は近くても特に問題ありませんでした。

これからは、人と人との距離が最低でも2倍、3倍が標準になるでしょう。会議室やオフィスの維持や運営にかかる費用は面積あたりで変わりませんので、当然、一人当たりの単価は上がっていきます。


コストパフォーマンスで考えると、これまでと同じ効果をあげようとすると、広さが2倍、3倍でも価格が同じ会議室を使う。つまり事務所機能を地方に移すことになります。もう一つは、会議や仕事の効果を2倍、3倍にすることです。


多くの場合は、各企業はこの二つの方法を組み合わせながら模索していくでしょう。対応できないところは、撤退していくのでしょうが、結果としては、サービス単価が上がっていく方向でしょう。

■ ライブハウスなどはどうなる

一時期、新型コロナウイルスの感染の元凶のように言われたライブハウス。このままでは、密接、密着、密集の三密の場所であることは間違いないので、何らかの対応をしていかないと、生き残れないのは明らかです。

似たような業務形態のものはたくさんあります。居酒屋や、やり玉に挙がった、深夜の接客業などもそう。


ライブハウスは、演奏するアーティストや自分たちで演奏する音楽を軸に、コミュニケーションをする場所です。決して若者たちばかりの場所ではありません。

私は、音楽は人生を豊かにするもの、それを共有する場の一つがライブハウスだと思っています。何より、楽しいですしね。


グループの中での話が中心になる居酒屋での飲み会に比べると、アルコールの量も少ないし、ずいぶん健康的なパフォーマンスの場所なので、生き残ってほしいし、逆にこれを機会に地方部にも広がっていって欲しいです。


では、どうすればいいか


現在の店舗であっても、三密を避けるような椅子配置とか、運営は当然の処置になります。


それから、これまでのライブハウスのイメージで「空気悪いなあ」というものかありました。これがライブハウスの雰囲気ではあったのですが、これから脱却しないと、アフターコロナで再スタートして市民権を得るのは難しいでしょう。


これから脱却するには、例えば、床下からエアコンで温度調整した外気を取り入れ、室内循環をしないで、そのまま外に出すような工夫が必要になるでしょう。


もう一つの考え方は、土地単価の安い地方部で三密を避け、コストをかけないでも換気も確保できる、新しいライブハウススタイルを模索していくことです。

どの方法でも、経営者は思いきらないといけないし、ライブハウスを楽しみたい人はクラウドファンディングでもなんでも協力しないとできない。

それにしても、建築屋さん、空調屋さんは仕事が増えそうですね。

■ 公共事業はどうなる

地味に重要な産業が「公共事業」です。

なにかと批判の強い公共事業ですが、フロー効果を発揮すれば、景気の下支えになりますし、そのストック効果で国力の増強にもなります。

景気が下振れしたときには、市中に金を配分するという役割でテコ入れされてきた公共事業ですが、今回はそうはいかないようです。

コロナの影響で、公共事業では、業者からの「中断申し出」という制度があります。患者が出た、でなくても、材料が入らない、打ち合わせができない、などなど。

どうしてもリアルを伴いますので、この申し出の件数が増えているようです。

大手ゼネコンでは、ICT化が進んでいるとは言われますが、それでも現場を止めているところもあります。まして、地元を支える中小企業では、CIT化も中途で、感染が広がらないことを祈りながら仕事をしているのが現状でしょう。

このような中に、公共事業費を投入しても、市中に金が回っていかないのはわかっていますので、今回は公共事業での大幅な景気のテコ入れはないのでは。もちろん、災害復旧や落ちそうな橋を修繕するなど緊急性を要するものは対応しないといけません。

ただし、コロナ騒動が一段落し、景気が回復しないとき、回復基調になりそうなときには、これまでにないテコ入れがなされることが予想されます。そのときに備えて、関係者は準備をする時期なのでしょうね。

準備とは、出された事業を少ない人間でさばけるように、ICTを強化する。事務事業を効率化しておく。人間を育てる。業者間で新たな協力体制を整えておく。など。いずれにしても、「顔と顔を突き合わせて」ということが許されない、これを前提に準備を進めていく必要がありそうです。

さて、公共事業に携わる業態の中で最もICT化が遅れているのが「業務」分野。建設コンサルタントです。意外かもしれませんが、事実です。悪いことに、「中断申し出」をしてくるのも、業務が工事の6倍ほどあるようです。この機に見直さないと、これからの補正はスピード感を考慮して、工事業者に測量設計工事一体発注、などというのが一般的になってしまうかもしれません。

■ まとめ

アフターコロナの世界は、だれも経験したことのない世界です。しかし、予想がある程度つく世界でもあり、その予想を正確にするには、感染の拡大を抑えることも重要です。

どう動いていくかは、「人間の価値・命の価値」をみんながコロナ騒動をとおしてどう見ていくか、それを正しい方向に導いていく「教育」だと考えています。

模索しながら、現実に爪を立てながら、そえでもできれば笑顔で、みんなで進んでいきましょう。

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